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あらすじ:東京-新潟間の上越線急行列車の車掌である上田新作。
平凡ではあるが、妻幸江と娘毬子とともに幸せな毎日を送っていた。そんなある日、先輩の専務車掌の野々宮太平との勤務中、新作は列車の中で幼馴染みの初恋の君である坂本美和子と偶然出逢う。有頂天になって話しかける新作は、美和子が何故か沈み込み、寂しげな顔に気付かなかった。その夜、新潟の街に遊びに出掛けた新作と野々宮は、以前野々宮の後を追いかけ回していた中年増の芸者ポン太とばったり会い、二人は這々の体で逃げ出す。その際、新作は芸者姿の美和子が酔客に絡まれているのを見掛ける。敢然と助けに入り、何とか美和子を救い出すのに成功した新作は、一人住まいの美和子の部屋の中まで送る。時は深夜、二人っきりの差し向かい。そんな中、新潟地震で両親を失ったこと、東京に働きに出た弟研吉が行方不明になっていること、生活のために芸者になったこと等美和子の悲しき身の上が語られ、同情した新作は美和子の力になってやろうと決心する。さて、新作と野々宮は、国鉄の職員団地に住んでおり、お互い隣同士の仲。そして、野々宮の妻富子と幸江は大の仲良し。そんなことは充分承知しているはずの野々宮が富子に、新作には新潟に凄い美人の恋人がいると冗談半分に口をすべらしたから、さあ大変。富子は早速幸江にご注進する始末。そんなこととは露知らず、新作は研吉捜しに精を出す。先ずは、行方不明になる前に勤めていた町工場に出向くと、そこで房子と名乗る女店員と出会う。その房子は研吉から結婚を申し込まれるが、つい心とは逆に冷たく断ってしまったこと、そのため研吉は無断で会社を辞め、房子もいま研吉を探しているところだと聞く。いかがわしい若者たちの溜まり場を訪ね歩き、遂に新宿の深夜スナックで、フーテンに身を落とした研吉を捜し当てる。新作は深夜スナックに毎日のように通い、研吉の不真面目な生き方に意見し、自らフーテン姿になって、研吉の心を和らげようとした。そして、薄汚い研吉をアパートに連れ帰った新作に幸江は吃驚仰天。クスリを飲みフラフラ暴れまわる二人を気が狂ったのではないかと心配し、ついには精神科医までが呼ばれる騒ぎとなる。そんな騒ぎの中、研吉が見つかった報を受けた美和子がその場へとやって来る。全ての事情を聞き、誤解であったことを知る幸江。また、研吉も新作の世話で上野駅の鉄道弘済会に勤めることになり、すべてが丸く収まる。お正月、新作と幸江に毬子、それに春には式を挙げることになった研吉と房子たちの5人は新幹線に乗って、お伊勢参りに向かうのであった。